コラム

COLUMN
鳥獣被害対策奮闘記

車両搭載ユーソニック(鹿対策)

全国の鉄道線路で、シカ(鹿)と列車が衝突(接触)する事故が相次いでいます。この対策として当社は、撃退装置を線路脇に設置する方法と、車両に搭載する方法の2つ検証しています。車両に搭載する方法は、1年計画のフィールドテストを終えて鹿との衝突事故や装置の故障もなく無事終了しました。
フィールドテスト中は、鉄道マニアの安全を考慮して路線名などを非公開としました。しかし、鉄道マニアは変化に敏感で、フィールドテスト開始直後から写真や動画がインターネットに公開されるようになりました。鉄道マニアは、探究心が強く、いつしかこの装置が鹿対策の用途と解析し「鹿よけバンパー」と命名されていました。この写真は、鉄道マニアのブログ「快速急行の活動日記」より転載したものです。多くのマニアのブログに投稿されている写真は、美しいものが多く掲載したい記事が沢山ありましたが転載禁止のためこの1枚を紹介しました。

この鹿よけバンパーは、連結器の両側に搭載したスピーカユニットを指しています。このユニットには、大容量スピーカ12台(左右各6台)が内蔵されていて、鹿の嫌う音を集中させる構造が特徴です。車両搭載ユーソニックの仕様では、最大16台のスピーカを搭載できますが、電車の車体構造によりスピーカを設置できる空間が異なるため今回12台を搭載しました。

従来方式として電車が走行するときの風圧を利用して鹿笛を鳴らす方式の事例も報告されていますが、鹿笛の音の有効範囲と列車の走行速度を考慮すると、鹿が鹿笛に気付いていた時の、列車との距離がどの程度かが重要です。例えば80Km/hで走行する列車は、1秒間に22m進みます。鹿を聞いてから鹿が退避行動を起こすまでの時間が重要になります。鹿は、列車や車を見て退避行動ができず固まってしまうこともあります。当社では、フリーズしたなど表現しています。鹿がパニックになってフリーズを起こさないためには、鹿が忌避音に気づいた時の列車との距離が必要になります。

そのため、今回の車両搭載方式の装置の前方向の有効範囲の距離を伸ばす(音を収束させるか)がテーマの1つとなりました。今回1セット1年間のフィールドテストを実施しましたが、販売実績はありません。

この開発は、平成22年度 ぐんま新技術・新製品開発推進補助金(パートナーシップ支援型)事業を使用しています。産業支援機関は、NPO法人北関東産官学研究会です。共同研究先は宇都宮大学です。

北関東産官学研究会の冊子hikalo第42号(2011.12.13)に開発を紹介しています。

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