板金で磨く自社の夢

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読売新聞社の方が、元気な会社として取材に来てくれました。
また、長野県南牧村にも取材してくれて、とても嬉しく思います。

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内容

レタスやキャベツ畑が広がる長野県南牧村・・・・農作物を食い荒らすシカが嫌がる超音波を発する。群馬県高崎市矢島町の精密板金会社「モハラテクニカ」が発明した鳥獣撃退装置「ユーソニック」だ。・・・・ 実際、同村の畑は2009年度に2360万円の被害があったが、装置を設置した10年度は1700万円に減った。同村産業建設課の職員も効果を認める。 周波数などを変えることで、サル、ハクビシン、カラスにも効く・・・・新潟県や山梨県の自治体などに220台を販売した。 茂原社長の両親が1958年に創業した。現在の従業員は30人。茂原社長は先代の父親から、ちょっとした夢も受け継いだ。 「板金は、顧客から依頼されたものを作る。それとは別に、自社のオリジナル製品を作りたい」・・・・「また何かできねえかな」と思っていた05年末、鳥獣による農作物被害のニュースを見聞きし、一念発起した。 板金業ゆえ、金枠はすぐにできる。音は高崎市のソフト開発会社に依頼した。産学連携のプロジェクトとして、宇都宮大学から技術指導を受けた。 数か月後には、実験にこぎつけた。カラスの被害に悩む高崎市の農地に、1台を設置。社員らとドキドキしながら様子を見ていると、カラスは自慢の装置にポンと乗っかった。失敗だった。 超音波の波形をかえて、何度も実験を繰り返した。「『この音どう?』ってカラスに聞くわけにいかないから」。冷ややかな周囲の反応もあった。経理をつとめる妻の智子さん(52)は、かさむ研究費に「いい加減、道楽をやめて」と何度もいさめた。 しかし、半年後。カラスの飛来は突然、止まった。「これはやった! 完成したかも!」。実験を重ね、動物に慣れがあることや、設置場所の地形で効果に差が出ることもわかった。 09年2月に、自社内に事業部を立ち上げた。愛知県の工場の新車置き場でカラスのいたずらに頭を抱えていたトヨタからは、7台の注文がきた。「世界のトヨタだ。これを成功させれば大きい」。1年後、効果が認められ、7台の追加注文があった。 シカとの衝突事故に悩む鉄道会社からの依頼も舞い込んだ。昨年12月には、車体の下に12台を付ける実験を開始。社長の情熱にひかれた専従スタッフ3人が日々、装置の改良を続ける。 注文は増えているが、智子さんはこう話す。「経理の立場から見ると、まだまだ道楽。商売として軌道に載せてくれないと」 妻に背中を押されながら、夢を磨き続けている。

(2012年1月7日  読売新聞より)